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睡眠障害・不眠症

睡眠障害・不眠症について

睡眠障害・不眠症について睡眠障害とは、寝つきが悪い、途中で何度も目が覚める、眠りが浅いなど、様々なタイプの症状を含む状態です。原因として、概日リズム睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などの疾患が関係していることもあります。これらの病気が背景にある場合、安易に睡眠薬を使用するとかえって悪影響を及ぼす可能性があります。

また、アレルギーによるかゆみが不眠の一因となることもあります。さらに、うつ病などの精神的な疾患が関与しているケースも少なくありません。睡眠の質を高めるだけでなく、根本的な原因となっている病気への対応が重要です。眠りに関するお悩みがある方は、お気軽にご相談ください。

不眠症の原因

不眠症の原因不眠症の要因は1つに限らず、身体的・心理的・生活習慣的・環境的な様々な要素が重なり合って引き起こされると考えられています。
現在、日本では成人のおよそ5人に1人が何らかの睡眠の悩みを抱えており、不眠症に悩む方は年々増加傾向にあります。

その背景には、生活リズムの乱れや情報過多、ライフスタイルの多様化、ストレスの増加、高齢化社会の進行などが影響していると言われています。

身体的要因

皮膚のかゆみや頻尿、ホルモンバランスの変化といった身体の不調が関係していることがあります。
具体的には、アトピー性皮膚炎、前立腺肥大、更年期障害などが原因となるケースが多いです。

心理的要因

人間関係の悩みや日常的な不安、怒りやイライラなどの精神的ストレスも不眠の一因となります。

生活習慣的要因

過度の飲酒や喫煙、カフェインの摂りすぎは睡眠の質を低下させます。
特に、就寝前までスマートフォンやタブレットを使用していると、入眠障害が起こりやすくなります。また、ストロング系のアルコール飲料やエナジードリンク、夕方以降のコーヒーや紅茶の摂取なども不眠の原因となり得ます。

環境的要因

引っ越しや入学、転職、部署異動など、生活環境の変化がストレスとなり、不眠を引き起こすことがあります。
季節の変わり目なども影響する場合があります。

睡眠障害・不眠症のタイプ

睡眠障害は大きく分けて「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」の4つのタイプに分類されます。

これらは単独で現れることもありますが、複数のタイプが同時に見られることも多く、特に高齢の方では複数の症状を訴えるケースがよくあります。タイプによって治療方法や対処の仕方が異なるため、ご自身の症状がどのタイプに該当するかを把握することが大切です。

入眠障害

布団に入ってもなかなか寝つけず、眠りに入るまでに30分~1時間以上かかる状態です。
このことに不快感を覚えるのが特徴で、不眠症の中でもよく見られる訴えです。緊張や不安が強いときに生じやすくなります。

中途覚醒

一度眠っても夜中に何度も目が覚め、その後なかなか再入眠できない状態です。
加齢に伴って眠りが浅くなることから、中高年や高齢の方に多く見られ、日本人の不眠症状の中でも最も頻度が高いと言われています。

早朝覚醒

希望する起床時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまう状態です。
加齢によって体内時計のリズムが変化し、早寝早起きの傾向が強まるため、高齢者によく見られます。また、うつ病の症状として現れることもあります。

熟眠障害

十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、ぐっすり眠った感覚が得られない状態です。
睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害など、睡眠中に異常が起こる疾患が関連していることがあります。

睡眠時無呼吸症候群は、就寝中に呼吸が止まり、睡眠の質・量ともに低下する病気です。日中の強い眠気として現れることが多く、検査が必要になる場合もあります。一方、周期性四肢運動障害は、睡眠中に足が繰り返しぴくぴくと動き、本人が眠りの浅さを自覚しにくい点が特徴です。
このような睡眠障害は、本人が気づかないうちに進行していることもあり、他のタイプの不眠と併発するケースもあります。気になる症状がある場合は、早めの受診をお勧めします。

睡眠障害・不眠症の
セルフチェック

次の項目に心当たりはありませんか?

  • 夜しっかり眠った感じがしない
  • 以前より寝つきが悪くなったと感じる
  • 夜中に何度も目が覚めてしまう
  • 寝る前にパソコンやスマートフォン、ゲームをよく使用している
  • 十分な睡眠時間を取っているのに熟睡できていない
  • 睡眠不足の影響で疲れやすく、やる気が出ない
  • 日中に強い眠気を感じることが多い
  • 集中力・注意力・記憶力の低下で日常生活に支障がある
  • 頭痛、胃腸の不調、肩こりなど身体に不調がある
  • イライラしたり、気分が沈んだりしやすい
  • 「また眠れなかったらどうしよう」と不安を感じる

これらの項目に複数当てはまる場合、睡眠障害の可能性があります。
症状が続くと生活や健康に大きな影響を及ぼすこともありますので、無理せず当院へご相談ください。

睡眠障害・不眠症の診断

睡眠障害の4つのグループ

睡眠障害は、その原因や背景によっていくつかのタイプに分類されます。米国睡眠障害センター協会の分類では、主に以下の4つのグループに分けられています。

精神生理学的要因による不眠

最も多く見られるタイプの不眠症です。精神的ストレスや生活環境の変化などに対する一時的な反応として起こります。例えば、海外旅行による時差、外科手術の入院、強い緊張などが引き金となることがあります。

精神障害に伴う不眠症

心療内科や精神科で多く見られる不眠症です。うつ状態、うつ病、神経症、その他の精神疾患に伴って発症することが多いです。

アルコールや薬物の使用に関連した不眠

アルコールや薬物の長期使用によって引き起こされるタイプです。寝酒の習慣が続くことで、次第に飲まないと眠れなくなり、睡眠の質が悪化します。寝つきはよくても途中で目が覚めやすく、再び飲酒してしまうなど、悪循環に陥るケースが少なくありません。

身体的・中毒性疾患などに伴う不眠

身体の不調や疾患により不眠が生じる場合です。不整脈、呼吸困難、咳、喘息、発熱、皮膚のかゆみなどが原因となります。このようなケースでは、内科的な検査と治療が必要です。また、肥満に伴う睡眠時無呼吸症候群や、特発性周期性四肢運動障害などが原因で中途覚醒を伴う不眠が見られることも稀にあります。

睡眠障害・不眠症の治療

睡眠障害・不眠症の治療身体的疾患や中毒性疾患が原因で起こる不眠には、肝機能障害、腎疾患、鉄欠乏症、糖尿病などが関与していることがあります。このようなケースでは、まずは内科的な検査・治療を優先することが望ましいとされています。

また、睡眠時無呼吸症候群や特発性周期性四肢運動障害などが疑われる場合には、睡眠ポリグラフ検査といった専門的な検査が必要となり、一部の耳鼻科や呼吸器内科で対応可能です。これらの身体的な問題が原因の場合、原因疾患の治療によって不眠症状が改善することも少なくありません。

当院では、それ以外の睡眠障害や不眠症の治療を中心に行っております。実際には、精神的・生活習慣的な要因による不眠の方が多く見られます。治療では、生活習慣の見直しを中心とした生活指導と、必要に応じて少量のお薬を併用しながら進めていきます。生活指導では、乱れた体内リズムを整えることを目的とし、睡眠環境や生活パターンの見直しを行っていきます。

不眠の原因が過度のストレスであったり、「眠れないこと」そのものが強いストレスになっている場合には、他の精神疾患を併発する可能性もあります。そのようなケースでは、入眠を助けるお薬や、ストレス・不安を和らげる抗不安薬、抗うつ薬などを使用することもあります。
なお、近年では「よく眠れる」と謳う市販薬が多く出回っていますが、長期的な使用は推奨されません。眠れないことに対して不安が強くなっている場合は、早めに当院へご相談ください。

睡眠障害・不眠症の
よくある質問

交代勤務のために十分な睡眠時間が確保できず、困っています。どうすれば良いでしょうか?

交代制勤務では、体内リズムが乱れやすく、十分な睡眠を取ることが難しくなりがちです。しかし、工夫次第で質の良い睡眠を確保することが可能です。以下のような方法を試してみてください。

  • 職場の照明を明るくすることで眠気が抑えられ、作業効率の向上にも繋がります。
  • 可能であれば、連続勤務や勤務間の休息時間を考慮し、睡眠が取りやすいスケジュールに整えることで、睡眠時間の確保に繋がります。
  • 帽子やサングラスなどで日光を遮ることで、帰宅後の入眠がスムーズになります。
  • 家族の協力を得て、日中の睡眠時には音や光を最小限に抑えられるよう寝室の環境を調整しましょう。

快適な眠りのためにできることはありますか?

質の良い睡眠を得るためには、寝る前の過ごし方や環境を整えることが大切です。以下のような工夫を取り入れることで、自然な眠りに繋がりやすくなります。

  • 自然な眠気が訪れてから寝室へ行くようにしましょう。
  • 室内の温度と湿度を快適に保ちましょう
  • 照明を控えめにし、遮光カーテンや防音対策で静かで落ち着いた空間を作りましょう。
  • 寝る前1〜2時間はリラックスを意識しましょう。軽い読書やぬるめのお風呂、心地よい香りなど、自分に合ったリラックス方法を取り入れることで、スムーズな入眠に繋がります。
  • 就寝の4時間前からはコーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインの摂取を控えましょう。また、1時間前からの喫煙も寝つきにくくなる原因となります。
  • アルコールを睡眠薬代わりに使用するのは逆効果です。眠りが浅くなるだけでなく、依存や飲酒量の増加を招く恐れがあります。
  • LED画面から発せられる強い光は脳を刺激し、体内時計を乱す原因になります。就寝1時間前からはスマートフォンやテレビ、パソコンの使用をできるだけ控えましょう。

理想的な睡眠時間はどれくらいですか?

必要な睡眠時間は人によって異なります。一律に「何時間」と決めることは難しく、日中の過ごしやすさや活力の有無が、質の良い睡眠が取れているかどうかの目安になります。

  • 理想的な睡眠時間には個人差があります
  • 日中の集中力や仕事のパフォーマンスが維持できていれば、その睡眠時間が自分にとって最適と言えるでしょう。
  • 年齢とともに睡眠時間は短くなり、眠りも浅くなります

体内時計の乱れとは具体的にどういう状態ですか?

不眠症の原因の1つに「体内時計の乱れ」があります。体内時計は、夜になると身体を休息モードに切り替え、脳の活動を抑えて自然な眠りへと導く働きをしています。質の良い睡眠を取るためには、この体内リズムが整っていることが重要です。

  • 生活習慣を整えるためのポイント
  • 毎日同じ時間に起きるようにしましょう
  • 起床後すぐに太陽の光を浴びましょう
  • 朝食をしっかり摂る習慣をつけましょう
  • 夜間はできるだけ強い光を避け、照明を落としましょう

体内時計が一度乱れてしまうと、元に戻すにはある程度の時間がかかります。生活習慣を見直してもすぐに改善が見られないこともありますが、焦らずに少しずつ整えていくことが大切です。

お薬を使わずに不眠を改善したいのですが、どうすれば良いですか?

お薬を使わずに不眠の改善を目指す場合は、まずカウンセリングなどを通じて、睡眠に悪影響を与えている生活習慣や行動パターンを見つけ出すことが大切です。
近年は多様な生活スタイルが広がる中で、それぞれのライフスタイルに潜む「無意識の習慣」が不眠の原因になっているケースも見受けられます。こうした習慣を1つひとつ丁寧に見直すことで、お薬に頼らずに眠りの質を改善できる可能性があります。
また、どうしても眠れない状況が続く場合には、依存性や習慣性の少ない、安全性に配慮されたお薬も登場しています。ご希望や不安な点があれば、遠慮なくご相談ください。

むずむず脚症候群かもしれないですが、どのような治療を行いますか?

軽度の場合には、就寝前の飲酒を控えることや、夕方以降にコーヒーや紅茶、緑茶などカフェインを含む飲み物を避けることが勧められます。また、シャワーなどの軽い刺激を脚に与えることで症状が和らぐこともあります。
一方で、症状が重度の場合は、鉄分を多く含む食事を意識したり、必要に応じて鉄剤を服用することが検討されます。
さらに、むずむず脚症候群には脳内のドーパミン伝達機能の異常が関係しているとされており、その働きを調整するお薬を少量から試すこともあります。
こうした治療で十分な改善が得られない場合には、神経に直接作用して症状を和らげる非ドーパミン系の薬剤を併用することもあります。

受診の目安について教えてください。

次のような状態に当てはまる方は、一度医療機関での受診を検討してください。

1.以下の症状のうち、いずれかに該当する場合

  • 寝つきが悪い
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 朝早く目が覚めてしまう
  • 眠ることに対して抵抗感を覚える

2.上記に加えて、以下の日常生活への支障が1つでも該当する場合

  • 日中に強い眠気がある
  • 倦怠感や疲れが取れにくい
  • 頭痛や胃腸の不調を感じる
  • 記憶力や注意力が低下している
  • 仕事や家事の能率が落ちたり、運転時に注意力が散漫になる
  • 活動意欲が低下している
  • イライラや気分の落ち込みがある
  • 眠れないこと自体が不安になっている

上記のような状態が週に3回以上、かつ3ヶ月以上続いている場合は、不眠症の可能性があり、早めの受診をお勧めします。

休日に寝だめするのは効果がありますか?

平日の睡眠不足を解消しようと、休日に長く眠る「寝だめ」をする方は少なくありません。一時的には疲れが取れたように感じるかもしれませんが、実は寝だめは体内のリズムを乱す原因となります。
休日に遅くまで寝ることで、平日と比べて起床時間が大きくずれ、睡眠と覚醒のリズム、つまり体内時計とのバランスが崩れてしまいます。その結果、週明けに再び早起きしようとすると、体が対応できず疲労感が残りやすくなるのです。
このような状態は「社会的時差ボケ」とも呼ばれ、毎週末ごとに体に時差を起こしているようなものです。そのため、休日に寝だめをするよりも、平日の睡眠時間をなるべく確保し、一定のリズムで生活することが望ましいと言えるでしょう。

不眠症のお薬は一度飲み始めたらやめられないですか?

不眠症のお薬を飲み始めると、ずっと飲み続けなければならないと心配される方も多いかもしれません。しかし、正しく服用し、医師の指示に従って治療を行えば、お薬を中止できるケースも少なくありません。
確かに、症状の改善に時間がかかる場合もありますが、最近では依存性が少なく安全性の高い睡眠薬も登場しています。治療の初期段階では、まずは十分な効果を得ることを重視し、症状が安定してきた段階でお薬を少しずつ減らしていくことが可能です。不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

眠れないとどのような問題が起こりますか?

不眠症は「夜に眠れない」というつらさだけに留まりません。日中には強い眠気や倦怠感、集中力の低下など、心身に様々な影響を及ぼすようになります。
また、慢性的な不眠はうつ病の発症リスクを高めると言われており、高血圧や糖尿病といった生活習慣病との関連も報告されています。
「最近よく眠れない」「寝ても疲れが取れない」と感じる場合は、早めに当院までご相談ください。

不眠の原因は何ですか?

不眠の原因は人それぞれ異なりますが、その1つに「覚醒と睡眠のバランスの乱れ」が挙げられます。通常、私たちの体は眠る時間になると自然に睡眠を促す働きが高まりますが、強いストレスや不規則な生活、睡眠習慣の乱れがあると、覚醒を維持する働きが過剰になり、眠気が起こりにくくなってしまいます。

不眠症のお薬にはどのようなものがありますか?

不眠症の治療には、これまでに使用されてきたベンゾジアゼピン系と呼ばれる「GABA受容体作動薬」に加え、近年では「オレキシン受容体拮抗薬」や「メラトニン受容体作動薬」といった新しいタイプの治療薬も登場しています。
GABA受容体作動薬は、古くから開発・使用されているため種類が多く、現在も有効性が高い薬剤が数多く処方されています。即効性が高い反面、依存性が高いお薬もあれば、作用は穏やかでも依存性が少ないお薬もあります。さらに、不安を軽減したり、軽い抑うつ症状に効果があるお薬もあります。
一方で、近年登場したオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬は、不安や気分への作用はあまり期待できないものの、依存性が少ないとされており、安全性の面で優れた特徴があります。ただし、これらの新しいお薬は効果に個人差が出やすい傾向があります。
このように、様々なタイプのお薬が登場しており、患者様の症状や体質に応じて柔軟に選択できるようになってきています。医師と相談しながらご自身に合ったお薬を使用することが大切です。

  • GABA受容体作動薬
    脳の興奮を抑えるGABAの働きを高めることで、神経活動を鎮めて眠気を促します。
  • オレキシン受容体拮抗薬
    覚醒状態を維持する「オレキシン」という物質の働きを抑えることで、過剰な覚醒を防ぎ、入眠を助けます。
  • メラトニン受容体作動薬
    体内時計の調整に関わる「メラトニン」の作用を高め、睡眠リズムを整えることで自然な眠りを促します。

不眠症ではどのような症状が現れますか?

不眠症には主に4つのタイプがあり、それぞれに特徴があります。タイプによって適切な対処法や治療法が異なるため、まずは自分の症状がどのタイプに該当するのかを把握することが重要です。

  • 入眠困難
    布団に入ってから30分以上経っても眠れない状態を指します。特に緊張や不安が強いときに起こりやすいとされています。
  • 中途覚醒
    一度眠っても夜中に何度も目が覚めてしまい、その後の再入眠が難しいタイプです。日本人の不眠症の中で最も多く、特に中高年に多いです。
  • 早朝覚醒
    予定していた起床時間よりも2時間以上早く目が覚め、その後眠れなくなってしまう状態です。高齢者に多いです。
  • 熟眠困難
    十分な睡眠時間をとっているにもかかわらず、ぐっすり眠った感じが得られないタイプです。他の不眠タイプと重なって見られることも少なくありません。

お薬をやめる理由にはどのようなものがありますか?

不眠症の治療薬を使用している中で、次のような問題が生じた場合には、お薬の中止や変更を検討する必要があります。

  • 以前は効果があったお薬でも効き目が薄れてきて眠れなくなってしまった
  • 全く眠れない状態が続く
  • 日中に強い眠気に襲われる
  • 一時的な物忘れが起こる
  • ふらつきや転倒・骨折

こうした副作用や効果の減弱を避けるためにも、お薬はその時点での症状や体調に応じて、安全に継続できるかどうかを慎重に判断する必要があります。問題が現れた際には、主治医と相談しながらお薬の減量や切り替えを進めることが大切です。
症状が改善した後も、何となくお薬を続けてしまうのではなく、治療の終了を視野に入れて、医師とともに慎重に服用の中止に向けた計画を立てるようにしましょう。

治療はどのような流れで進めますか?

不眠症の治療は、まず生活習慣の見直しから始まります。睡眠の状況を把握したうえで、必要に応じて薬物療法を併用していきます。治療によって症状が改善してきた場合には、お薬の減量や中止といったステップへ移行します。
症状によっては一定期間、治療を継続する必要があることもありますが、状態が落ち着いた後は、服用を中止しやすいお薬に切り替えたり、飲み方を調整したりすることも大切です。治療に関する不明点がある場合は、遠慮なく医師にご相談ください。

お薬に依存してしまわないか不安ですが、大丈夫でしょうか?

睡眠薬を使用すると依存してしまうのではないかと不安に思う方もいらっしゃいますが、不眠症は慢性疾患の1つであるため、一定期間はお薬による治療が必要になることがあります。
現在使われている多くの睡眠薬は、長期間服用しても強い依存を生じにくいとされています。眠れるようになれば、医師と相談しながら少しずつお薬の量を減らしたり、中止に向けた調整を行うことが可能です。
なお、症状が落ち着いたからと自己判断で急にお薬をやめたりすると、不眠が再発することがあります。お薬の調整については、必ず医師の指導のもとで進めるようにしましょう。

睡眠時間の目安はありますか?

必要な睡眠時間は、年齢や発育段階によって異なります。例えば、小学生であれば9~10時間程度、20歳頃までは7~7.5時間程度が目安とされます。10代は個人差が大きく、中学生で7時間で足りる人もいれば、大学生になっても8時間以上の睡眠が必要な人もいます。
成人以降は必要な睡眠時間に大きな変化はなく安定しますが、60歳を迎えると徐々に短くなり、70歳を超えると6時間未満になることもあります。また、年齢とともにトイレに起きる回数が増えるなどして中途覚醒が多くなる傾向にありますが、高齢者でも7時間ほど眠れていれば特に問題はないと考えられます。
平成28年に実施された総務省の社会生活基本調査によれば、15~19歳の睡眠時間は平均で7.3時間と、やや不足傾向にあることが示されています。一方で、60歳以降の睡眠時間は徐々に長くなり、70~74歳では男性が平均8時間、女性が7.6時間と、むしろ長めの傾向が見られました。
なお、ごく少数ですが、いわゆる「ショートスリーパー」と呼ばれる、短い睡眠時間でも日中の活動に支障が出ない人もいます。総じて、無理なく日中を過ごせていれば、それがその人にとって必要な睡眠時間であると考えてよく、あまり「何時間寝るべきか」にこだわりすぎないことが大切です。

就寝前の飲酒は控えた方がいいですか?

アルコールには一時的に眠気を促す作用があるため、就寝前にお酒を飲むことで寝つきが良くなるように感じることがあります。しかし、アルコールの効果は一晩中持続するわけではなく、夜間の後半になると目が覚めやすくなることがあります。
さらに、アルコールは睡眠の質を低下させる原因にもなります。浅い眠りが続いたり、夜中に何度も目覚めたりするほか、利尿作用によりトイレに起きる回数が増えてしまうこともあります。
就寝前の飲酒を習慣にしてしまうと、次第に体が慣れて効果が薄れ、より多くのアルコールを必要とするようになります。この状態が続くと、アルコール依存症のリスクも高まります。
そのため、飲酒はあくまで適量を守り、睡眠に影響しない時間帯に留めることが大切です。

不眠と生活習慣病は関連性がありますか?

慢性的な睡眠不足や不眠は、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の発症リスクを高めることが、数多くの研究から明らかになっています。不眠と生活習慣病は密接に関係しており、互いに影響を及ぼし合うことがあると考えられています。
例えば、入眠困難や中途覚醒、早朝覚醒といった不眠の症状を抱えている人は、不眠症状がない人に比べて糖尿病を発症するリスクが約2~3倍高いという報告があります。また、高血圧に関しても、同様にリスクが約2倍になるとされています。
日々の睡眠を見直し、適切にケアしていくことが健康維持に繋がります。

睡眠時無呼吸症候群とは具体的にどういう状態ですか?

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が一時的に止まる「睡眠関連呼吸障害」の一種です。この疾患には、閉塞型・中枢型・混合型の3つのタイプがあり、なかでも最も頻度が高いのは閉塞型です。
閉塞型は、睡眠中にのどや舌の筋肉が緩むことで気道が塞がったり狭くなったりし、その結果として呼吸が止まる状態が引き起こされます。無呼吸によって脳や体が酸素不足になると、強い呼吸努力が働き、何度も中途覚醒を引き起こします。これにより、本人が気づかないまま睡眠の質が大きく低下してしまいます。
一方、中枢型は、睡眠中に脳の呼吸中枢からの指令が一時的に途絶えてしまうことで呼吸が止まるタイプです。そして混合型は、閉塞型と中枢型の両方の特徴を併せ持っています。
この病気の発症に最も深く関わっている要因は「肥満」とされており、体重増加によって気道が圧迫されやすくなることでリスクが高まります。その他、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎による鼻づまり、小顎骨の発育不全、加齢なども原因として知られています。
睡眠時無呼吸症候群による睡眠の質の低下は、昼間の強い眠気や慢性的な疲労感、集中力の低下といった症状を引き起こし、仕事や日常生活に支障をきたすことがあります。また、吸気時の負担によって胸が陥没するような呼吸が起きたり、胸郭の変形を伴うこともあり、こうした呼吸の異常は心臓への負荷を高めます。その結果、不整脈や高血圧といった循環器系の疾患を引き起こしたり、既存の疾患を悪化させる可能性もあるため注意が必要です。

熟睡するためにはどのような点に注意すべきですか?

以下のポイントに気を付けて、睡眠環境や生活習慣を整えることが大切です。

  • 起床時に太陽の光を浴びる
  • カフェインなど刺激物は控える
  • 熱すぎるお風呂は避ける
  • 昼間に長時間眠らない
  • 就寝前にお酒を飲まないようにする
  • 夜はスマートフォンやパソコンなどの強い光を避ける

メラトニンとは何でしょうか?

メラトニンとは、脳の松果体という部位から分泌されるホルモンで、睡眠と深く関わっています。日中、目に光が入っている間はメラトニンの分泌量は抑えられていますが、日が沈み、光の刺激が減るとその分泌が増え、自然な眠気を誘発するようになります。
このように、メラトニンは体内時計を調整する役割を持ちます。

睡眠薬を飲んでからふらつきや脱力感がありますが、どうすれば良いですか?

就寝前に睡眠薬を服用し、起床時に眠気やめまい、ふらつき、頭が重いといった症状が出ることがあります。このような副作用が見られる場合には、減薬したり、より短時間で作用が切れるタイプのお薬に変更することが検討されます。
また、こうした副作用がある状態で自動車の運転や機械の操作をすることは非常に危険です。薬剤の添付文書にも記載がある通り、強い眠気やふらつきがある場合は、活動を控えるようにしましょう。必要に応じて、医師と相談のうえでお薬の種類を見直すことが重要です。
特に、ふらつきが強い場合には、睡眠薬に含まれる「筋弛緩作用」が関与している可能性があります。筋弛緩作用は、不安や緊張が強い方にとっては有効ですが、その一方でふらつきや転倒のリスクが高まる要因にもなります。このような副作用が日常生活に支障を来している場合には、筋弛緩作用の少ないお薬への切り替えを検討する必要があります。

睡眠薬をお酒と一緒に飲むのはダメですか?

睡眠薬、特にベンゾジアゼピン系のお薬をアルコールと併用することは絶対に避けなければなりません。両者は肝臓で同じ酵素によって代謝されるため、同時に摂取すると代謝が遅れ、作用が強まりやすくなります。その結果、翌日まで眠気やふらつきが残ったり、呼吸が抑制される、記憶障害が起こるなどのリスクが高まります。また、重篤なケースでは、呼吸が止まり命に関わるような危険な状態になったという医学的な報告もあります。
さらに、睡眠薬の代わりにアルコールを摂取する方もいらっしゃいますが、これも望ましい方法とは言えません。アルコールは睡眠の前半ではリラックス効果をもたらしますが、後半では覚醒作用が強くなるため、結果的に睡眠の質を低下させます。長期間にわたってアルコールに頼ることは、慢性的な睡眠の質の低下に繋がる可能性があります。