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傷病手当金に関する質問

傷病手当金とはどのような制度ですか?

傷病手当金は、病気や怪我により働けなくなったときに、本人や家族の生活を支えることを目的として支給される公的な給付制度です。受給するには、一定の条件を満たした上で、所定の手続きによる申請が必要となります。

この制度は、全国健康保険協会(協会けんぽ)、共済組合、組合健保などの健康保険に加入している方が対象です。一方、国民健康保険には傷病手当金の仕組みがないため、フリーランスや自営業の方は利用できませんのでご注意ください。

傷病手当金はいくら支給されますか?

傷病手当金の支給額は、基本的に給与のおよそ3分の2に相当します。また、この給付は非課税扱いとなるため、所得税は課されません。

具体的な支給額は、支給開始前の直近12ヶ月間の給与の平均をもとに次の式で算出されます。
(過去12ヶ月の平均月収÷ 30)× 2/3=1日あたりの支給額

休んだ期間の全てに対して傷病手当金は支給されますか?

傷病手当金は、休み始めた初日からすぐに支給されるわけではありません。最初の3日間は「待機期間」とされ、連続して3日間休んだ後、4日目以降の休業日に対して支給が開始されます。

なお、以下のようなケースでも待機期間として認められます。

  • 3日間のうちに土日祝日や有給休暇が含まれている場合
  • 連続3日休んだ後に一度出勤し、その翌日から再び休んだ場合
  • 勤務中に早退し、翌日から休んだ場合(早退した日が1日目とカウントされます)

傷病手当金はどのくらいの期間受け取れますか?

傷病手当金の支給期間は、令和4年1月1日以降、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月と定められています。なお、令和2年7月1日以前に支給が始まっている場合も、原則として同様に最長1年6ヶ月まで受給可能です。

例えば、傷病手当金の受給開始から1年後に復職し、その後6ヶ月以上勤務を継続した場合、受け取れるのは最初の1年間分のみとなります。1年6ヶ月という期間は、1つの病気・怪我につき生涯で受け取れる上限です。同じ病気による再申請は原則認められないため、注意が必要です。

退職後も傷病手当金を受け取れますか?

傷病手当金の受給権は、健康保険の被保険者である期間中に発生したものに限られます。ただし、一定の条件を満たしていれば、退職後も継続して受け取ることが可能です。

具体的には、以下の全ての条件を満たしている必要があります。

  • 健康保険の資格を失う前日までに、継続して1年以上被保険者であったこと
  • 資格を喪失した時点で、既に傷病手当金の支給を受けている、または受給条件を満たしている状態であったこと

傷病手当金は会社が支給するのですか?

傷病手当金は、勤務先から支払われるものではなく、加入している健康保険(協会けんぽ、共済組合、組合健保など)から給付される制度です。そのため、給与とは別扱いとなります。また、傷病手当金は課税対象外のため、所得税がかからない非課税の収入となります。

傷病手当金はどこに申請すれば良いですか?

一般的な企業では、総務部や人事・労務担当部署が傷病手当金に関する窓口となります。まずはその部署に相談し、申請書類を受け取りましょう。書類には会社側が記入する欄もあるため、必要事項を記入したうえで、会社経由で提出するのが通常の流れです。

多くの場合、申請は会社を通じて健康保険組合に行われます。ただし、制度の存在を知らない上司や担当者がいることもあるため、そのような場合には、ご自身で直接問い合わせるか、会社側に確認してもらいましょう。

また、小規模な事業所では制度の取り扱いに不慣れなこともあります。その際は、保険証に記載されている健康保険組合に直接ご連絡頂くのも1つの方法です。会社経由でも個人からでも申請手続きは可能です。

申請には何が必要ですか?書き方の注意点は?

傷病手当金の申請には、所定の申請書類を全て揃える必要があります。申請書は、勤務先の総務や人事・労務の担当部署で受け取ることができます。申請書には、ご本人・事業主・主治医のそれぞれが記入する欄が設けられています。

当院では、患者様が申請用紙を持参頂ければ、主治医が診断に基づいた内容を記入・発行いたします。

実際に給付の可否を判断するのは健康保険組合です。記載内容が正確でも、必ずしも支給が認められるとは限りませんのでご了承ください。

それぞれの記入欄については以下の通りです。

【事業主が記入する欄】

会社が記入します。本人が就労できなかった期間などを証明する内容となるため、会社の窓口に提出して記入してもらいましょう。社内で対応が難しい場合は、健康保険組合に問い合わせてください。

【本人が記入する欄】

住所、保険証の情報、振込口座、マイナンバーなどを記入します。

  • 傷病名:
    主治医が記入した内容を正確に写してください。自己判断で記載することは避けましょう。
  • 初診日や休業期間:
    主治医や会社の記載内容に合わせて記入します。独自に判断して記入しないよう注意してください。
  • 発病時の状況:
    精神疾患など原因が複雑な場合は、「不詳」と記入して問題ありません。主治医の記載と同様に記入しても構いません。
【主治医が記入する欄】

診察の結果に基づいて、主治医が労務不能の期間や診断内容を記入します。申請書は受診時に持参し、医師に直接渡してください。なお、意見書の発行には別途費用がかかります。

  • 初診日(療養開始日):
    最初に医療機関を受診した日を記入します。傷病手当金の支給開始日とは異なります。
  • 労務不能と認めた期間:
    主治医が就労不能と判断した期間を記入します。有給休暇の使用状況とは関係ありません。
  • 継続申請の場合:
    前回の申請の翌日からの期間を対象に記入します。会社の締め日などの事情がある場合は、患者様から主治医に相談の上、指定の期間内で医師が必要と判断した範囲にて証明されます。原則として、未来の期間については証明できません。
  • 発病や負傷の原因:
    精神疾患の多くは複数の要因が重なって発症するため、「不詳」と記入されることが一般的です。原因が明確な場合は、大まかな内容が記載されることもあります。主治医の判断に従いましょう。

傷病手当金はどれくらいの頻度で申請すれば良いですか?

傷病手当金の申請は、働けなかった期間を申請書に明記することで、その該当期間に対して給付を受ける仕組みです。申請できる期間に明確な上限はなく、1週間でも1年でも構いません。ただし、未来の日付については労務不能の証明ができないため、申請は必ず事後に行う必要があります。

長期間まとめて申請することも可能ですが、その期間が経過するまで傷病手当金は支給されません。そのため、毎月給与を受け取っていた方は、1ヶ月ごとに申請する方が生活の負担を軽減しやすいでしょう。

また、企業によっては給与の締め日などの都合により、「この期間ごとに申請してください」といったルールがある場合もあります。その場合は、会社の指定に従って申請書類を準備し、必要な期間分の証明を主治医からもらいましょう。

申請書の様式によっては、労務不能と認められる期間の記入欄に制限があるケースもあります(例:記入可能なのが3ヶ月分までなど)。事前に様式の内容も確認しておくことが大切です。

転院するときの手続きはどうなりますか?傷病手当金は継続してもらえますか?

傷病手当金を受給している途中で病院を変える場合もありますが、転院後の医療機関でも、引き続き傷病手当金の申請手続きは可能です。当院でも、他院から転院された患者様の申請対応を行っております。ただし、受給期間に影響が出る可能性があるため、注意が必要です。

傷病手当金の申請書は、医師が実際に診察した期間についてのみ労務不能の証明が可能です。また、未来の日付に対する証明はできません。そのため、転院前の医師は「最後に診察した日」までしか記入できず、転院先の医師は「初診日」以降しか証明できません。

つまり、転院前と転院後の受診日の間に空白期間があると、その期間は労務不能を証明できず、傷病手当金を受け取れない可能性があります。このような空白を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

  • 転院前に紹介状をもらう:
    紹介状があれば、転院先の医師がこれまでの治療経過や状態を把握しやすくなり、連続した診療としてスムーズに対応できます。空白期間なく労務不能の継続を証明しやすくなります。
  • 転院前に新しい病院を受診しておく:
    今の病院に通院をやめる前に、転院予定の病院をセカンドオピニオンとして受診しておけば、受診の空白期間を無くせます。ただし、申請書類が複数枚になることや、受診の手間が増える点には注意が必要です。
  • 転院後に以前の病院を再度受診する:
    転院後、転院先の初診日までの期間について以前の病院を再受診し、労務不能の証明を受ける方法もあります。これによって空白期間をカバーできますが、申請書の記入が複数回必要になるなど、手続きが煩雑になる可能性があります。

傷病手当金用の診断書に費用がかかりますか?

傷病手当金の申請書において、主治医が記入する「意見書」欄の作成には傷病手当金意見書交付料がかかります。この費用は健康保険が適用され、3割負担の方であれば診察料に加えて○○円の自己負担となります。

会社に病名を知られずに傷病手当金を申請できますか?

傷病手当金を申請する際、多くの場合は休職中であり、その前提として会社に診断書を提出する必要があります。通常、休職の診断書には病名の記載が求められるため、会社に病名が伝わることが一般的です。

ただし、会社によっては診断書の提出が不要だったり、病名を明かさなくても休職を認めてくれる場合もあります。特に、1ヶ月程度の短期間の休職であれば、病名の提出が求められないケースもあるようです。

このように、休職手続きの段階で病名を伝えずに済んだ場合には、傷病手当金の申請方法を工夫することで、会社に病名を知られずに申請を進めることが可能です。申請書には会社(事業主)が記入する欄がありますが、本人や主治医が記入する欄は会社に提出する必要はありません。そのため、会社には事業主欄のみを渡して記入してもらい、その他の書類はご自身で揃えて健康保険組合に直接提出することで、病名を伏せたまま申請できます。

なお、会社によっては本人からの直接申請(自己申請)の仕組みについて把握していない場合もあります。「自己申請はできない」と言われることがあっても、制度上は可能ですので、落ち着いて制度の内容を説明し、必要な欄だけ記入してもらえるように依頼しましょう。

傷病手当金と失業手当の関係について教えてください。

傷病手当金と失業手当は、同時に受け取ることはできません。これは、それぞれの制度が適用される状況が大きく異なるためです。

  • まず、傷病手当金は、業務外での怪我や病気によって働くことができない状態(=労務不能)の際に、休業中の生活を支えるため健康保険から支給される制度です。この場合、「職はあるが、健康上の理由で働けない状態」にあることが前提となります。
  • 一方で、失業手当(基本手当)は、働く意思と能力はあるものの、仕事が見つかっていない状態(=失業中)にある方を対象に、雇用保険から支給される制度です。つまり、「健康で働けるが職がない状態」であることが要件となります。
  • このように、「労務不能」と「失業」はそれぞれ異なる前提に基づいているため、傷病手当金と失業手当を同時に受け取ることはできません。
  • ただし、在職中に傷病手当金を受給していて、その後に退職した場合、傷病手当金の支給期間(最大1年6ヶ月)が終了した後であれば、失業手当を受給することは可能です。その際は、医師による就労可能の診断書などが必要となり、ハローワークでの手続きが求められます。
  • 雇用保険にも傷病手当があると聞きましたが、どのような制度ですか?

    雇用保険には様々な給付制度があり、その1つに「傷病手当」があります。ただし、これは健康保険で支給される傷病手当金とは異なる制度で、対象となる条件や支給の目的も違います。

    雇用保険の基本手当は、失業状態にある方が再就職を目指して求職活動を行っている期間中に、一定の条件のもとで経済的な補償を受けるための制度です。その中で「雇用保険の傷病手当」は、求職活動の途中で病気や怪我により活動ができなくなった場合に支給されるものです。

    一方、健康保険の傷病手当金は、雇用されている状態で労務不能となり、会社を休んでいる間に支給される制度です。

    つまり、雇用保険による傷病手当は、既に失業していて、求職活動中に病気や怪我で働けなくなった場合が対象です。健康保険の傷病手当金とは制度の位置づけが異なります。

    求職中に怪我や病気で活動ができなくなった場合には、早めにハローワークへ相談することをお勧めします。

    労災保険や障害年金と傷病手当金は同時に受け取れますか?

    傷病手当金の他にも、公的な給付制度には労災保険や障害年金、老齢年金などがあります。しかし、これらの給付金と傷病手当金は原則として同時に受け取ることはできません。

    ただし例外として、労災保険や年金の給付額が傷病手当金の支給額よりも低い場合には、その差額分を傷病手当金として受け取ることが可能です。

    例えば、傷病手当金の日額が6,000円で、労災保険の休業補償給付の日額が5,000円であれば、その差額1,000円が支給されます。

    一方で、失業手当との同時受給は一切できません。制度の性質上、失業手当は「就労可能な状態」が前提であるのに対し、傷病手当金は「労務不能な状態」が前提であるため、併用は認められていません。