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抜毛症

抜毛症(トリコチロマニア)
について

抜毛症とは、自分自身で髪の毛などを抜いてしまう行為が繰り返される疾患です。

無意識のうちに抜いてしまうケースもあれば、意識的に抜いてしまう場合もありますが、どちらの場合でも、抜毛行為をやめようとしてもなかなか抑えられません。

思春期前後の女性によく見られ、発症頻度は100人に1~2人程度とされています。また、患者の約9割が女性であることが知られています

抜毛症(トリコチロマニア)
の合併症

抜毛症の中には、抜いた髪の毛を口に入れてしまうことがあり、これが原因で次のような消化器系の合併症が起こることがあります。

  • 胃穿孔
    髪の毛を飲み込むことで、消化されずに胃を傷つけ、最悪の場合には胃壁を突き破ってしまう状態です。
  • 幽門狭窄症
    飲み込んだ髪が胃の中で固まり、毛髪胃石となって胃の出口(幽門)を塞ぎ、通過が困難になる状態です。

髪の毛は見た目以上に硬く消化されにくいため、指に絡める、口に入れる、噛むといった行動を繰り返すうちに、無意識に飲み込んでしまうことがあります。このような合併症を防ぐためにも、早期の対処が重要です。

抜毛症(トリコチロマニア)
チェックシート

以下の項目に複数当てはまる場合は、抜毛症の可能性が考えられます。

頭髪や体毛を自分で引き抜く習慣がある はい いいえ
ペットの毛や衣類の繊維などを無意識に引き抜いてしまう はい いいえ
抜毛の影響で脱毛が目立つ箇所がある はい いいえ
引き抜いた毛を飲み込んでしまうことがある はい いいえ
抜毛をやめようと何度も試みたが、うまくいかない はい いいえ
強いストレスや疲労感を日常的に感じている はい いいえ

抜毛症では、自ら毛を抜く行動が繰り返され、対象は頭髪に限らず全身の体毛に及ぶことがあります。
また、抜毛行為に加えて、皮膚をむしる、爪を噛むなどの反復的な癖が見られる方も少なくありません。

抜毛症(トリコチロマニア)
の原因

抜毛症は、精神疾患の1つである「強迫症」に分類されます。
強迫症では、ある特定の考えに強くとらわれ、それによって自分では抑えられないほどの不安を感じることが特徴です。本人は、その考えが非合理的であると理解していても、不安を拭いきれず、同じ行動を何度も繰り返してしまいます。

抜毛症では、その繰り返し行動が「髪の毛を抜く」という形で現れます。特に思春期は、些細な出来事でも大きなストレスに繋がりやすく、そのことが抜毛症の発症のきっかけになることがあります。また、強迫症の方の中には、うつ病を併発しているケースもあります。

抜毛症(トリコチロマニア)
の疑いがある場合の
対応について

抜毛症(トリコチロマニア)の疑いがある場合の対応について抜毛症が疑われるケースでは、利き手側の側頭部や耳の周辺など、特定の場所に集中して毛を抜く傾向が見られることがあります。
髪質はしっかりしていても、同じ箇所に繰り返し負荷がかかることで切れ毛や脱毛が目立つようになります。

症状が一時的であれば、経過を観察する中で自然に落ち着くこともありますが、抜毛行為が続くようであれば、専門の医療機関への相談が望まれます。長期間にわたり抜毛が続くと、毛根が傷ついてしまい、将来的に髪が生えにくくなる可能性もあります。

抜毛症は、強迫症の一種として位置づけられるため、精神科での診察が基本となります。年齢や状況に応じて、小児科や思春期外来などの受診が適している場合もあります。

抜毛症(トリコチロマニア)
の治療法

抜毛症は、自然に軽快することもありますが、精神疾患の1つとして治療が必要になる場合もあります。

薬物療法

抜毛症は強迫症の一種とされており、治療にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)がよく用いられます。これは、うつ病の治療にも用いられるお薬で、抑うつ感や強い不安を伴う場合に効果が期待されます。

認知行動療法

心理的アプローチとしては、認知行動療法が有効とされています。
なかでも「習慣逆転法(Habit Reversal Training)」は、抜毛症に対して効果があるとされ、チック症や皮膚むしり症の治療にも応用されています。この方法では、まず自分がどのようなタイミングや状況で抜毛行為に及ぶのかを意識的に把握することから始まります。その上で、毛を抜く代わりとなる行動(代替行動)を身につけ、繰り返すことで抜毛習慣を減らしていきます。

抜毛症(トリコチロマニア)
が改善したら、
髪はどれくらいで生え揃う?

抜毛症(トリコチロマニア)毛を抜く行為が止まれば、自然と健康な髪が再び生えてくるようになります。
髪の成長には個人差がありますが、一般的なヘアサイクルはおよそ2〜6年とされており、この期間をかけて徐々に元の状態に近づいていきます。